愛知医療学院短期大学

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教員リレーコラム

愛国心と平和ぼけ

舟橋 啓臣 [理学療法学専攻]

テレビはどのチャンネルに合わせても、連日リオデジャネイロ・オリンピックの中継や、日本人選手の活躍状況を録画で流し、 まだ半分しか終わってないのに、幾分うんざりした気分に陥っているのは自分だけであろうか。 確かに表彰台で日の丸が挙がるのを見ると、感激で目頭が熱くなるのを覚えるが、それは4年間の選手とトレーナーたちの、 口には言い表せないほどの努力、忍耐、頑張りに思いを馳せるからである。4年間はすべてを犠牲にしてひたすら強くなることだけを考え、時には辞めてしまいたいという迷いにも打ち勝ち、きっと一度や二度はあったはずのスランプも乗り越え、 ひたすら自分とトレーナーたちを信じ続けてきたであろう練習の軌跡が理解できるからである。 日本人は愛国心(?)に基づいて皆が惜しみない声援を送っていることは確かである。

しかし、社会にはオリンピック以外の色々な出来事が毎日、どの時間にも起きており、気になるのは非常に注目すべきことが起きているにも関わらず、関心が持たれないまま過ぎてしまっていることである。 愛国心を揺さぶられる事件としては、日本の領土であるはずの竹島や尖閣列島、排他的海域への侵犯などがある。 いつもながら外務省はそれぞれの国の領事を呼びつけて、遺憾の意を強く伝えるだけのため、こうした国際法に違反する行為は減るどころか、年ごとにエスカレートしてきている。 折しも、8月15日は終戦記念日であるが、今やあの愚かしい戦争を知らない年代の人が90%近くになっているらしい。

そこで、不安を感じないではいられないのが、尖閣防衛のためと称して日本は新型の地対艦ミサイルを開発し、23年度に配備の方針という報道である。 広島や長崎で膨大な数の犠牲者が出て、未だに大勢の人たちが後遺症で苦しんでいるのに、今の日本が恐ろしい戦前状態に進みつつあるのではないかと、ある解説者が危惧していた。 国を愛することや、家族を守ることは大切にきまっているが、愚かで無謀な方法に頼ることは避けたいものである。

世界でも屈指の美しい国・日本、その美しさは平和という、優しくて断固とした強い信念を土台の上に成り立っているはずである。 広島・長崎というとてつもない大きな犠牲を払って勝ち得た平和である。この平和を大切に守っていきたい。だが、ここで問いたい。今の日本人は平和ぼけしていないだろうか?陰湿な事件が頻発し、考えられないような身勝手な振る舞いが横行している。 最近の事件の背景を考えると、到底理解できないようなものが少なくなく、戦慄感すら覚えることすらある。これからの日本を思いやると悲しいし、やりきれない気分になる。 8月15日を期して、オリンピック中継だけでなく、いやな事柄からも目を背けずに、自分を見つめ直したいものである。

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