愛知医療学院短期大学

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教員リレーコラム

「医療保険制度の崩壊を防ぐための第一歩」

種田 陽一 [作業療法学専攻]

 日本には世界に誇れる健康保険制度があり、どんな人でも比較的低料金で高水準の医療を受けることができます。しかし国民の健康保険料の負担は相当大きく、本年4月からの国民健康保険料は2万円上がって年82万円となりました。年々増加する医療費のため、これでも赤字という状態が続いており、更なる値上げが危惧されます。
 日本には不思議な制度があり、本来の医療ではない代替医療である整骨院などで場合により健康保険が使えるということで、これが保険財政をかなり圧迫しています。本来整骨院(接骨院)では柔道整復師が捻挫や打撲などの外傷による捻挫や打撲に対する施術と骨折・脱臼の応急処置が業務範囲で、変形性膝関節症や五十肩のような慢性疾患は取り扱えません。健康保険を使って外傷以外の疾患を治療することは違法です。外傷に関しても一度に3カ所以上の外傷がある場合に限り保険が使えますが、その様な外傷はかなり重度な外傷で、とても整骨院で対処できる様な外傷とは思えません。私の友人の保険審査委員が整骨院のレセプト(診療報酬明細書)を審査していますが、同日に3カ所以上の外傷の病名がついた不正請求と思われるレセプトが横行しているとのことでした。しかも病院や医院からのレセプトに関しては病名上適応ではない治療については審査委員が査定して請求金額を減額する権限をもっていますが、整骨院のレセプトに関しては審査はしても査定する権限がなく野放しの状態です。また自費施術以外認められていない慢性疾患に関しても抜け道があり、医師が同意書を書くと健康保険が使える様になります。整形外科医が同意書を書くことはありませんが、老人が受診している内科系の医師が患者さんの懇願に負けて同意書を書いている様です。一説には健康保険の財源の2割を整骨院が使っているとも言われており、整骨院での健康保険使用を制限することが健康保険財政立て直しの第一歩であると思います。整骨院の先生には、自費でも患者さんが通ってくれる施術を提供できる様に頑張って欲しいと思います。

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