愛知医療学院短期大学

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教員リレーコラム

子どもが吐きはじめたので吐き気止め薬を使う・・・それダメ~かも?

杉山 成司 [理学療法学専攻]

秋・冬から春にかけて多いのが感染性胃腸炎で流行する病気です。昨年11月には厚生労働省から感染性胃腸炎に対して「感染予防の啓発」がされ、この周辺でも12月から患者数が増え、今年2月に入ってようやく鎮火しつつある印象です。症状は発熱、嘔吐、下痢。大人にも感染します。
では今回テーマの「嘔吐(おうと)」、皆さんはどう対処しますか? 吐く状況は本人は元より看護する側も中々つらいものです。そこで、熱には解熱剤を試すように、手許に吐き気止め(制吐薬)があったら直ぐに使ってみますか? ここが肝心・・・で、ちょっと待って下さい。
嘔吐を来たす疾患は先の感染性胃腸炎をはじめいろいろですが、重要なことは、見逃してはならない緊急性の高い病気が紛れ込んでいる"かも知れない"という認識です。例えば、髄膜炎や脳症など中枢神経系の病気では発熱に続いてけいれん、ボーッとするなどの意識障害があり切迫した状態と実感できますが、中には嘔吐からはじまることがあります。腸重積や鼠径(そけい)ヘルニアの嵌頓(かんとん)(いわゆる脱腸)などでは腸が壊死を起こして緊急手術が必要なことも起こります。初期症状はくり返す嘔吐です。非常にまれですが、先天的な代謝異常症でもかぜ症状に続いてくり返す嘔吐がみられます。治療はその代謝障害に見合った処置を早急に導入しなければなりません。
これらに共通するキーワードは、早く発見すれば有効な治療手段につながるということです。めったにないといって最初から"その病気ではない"と決め付けるのは禁物です。
初期症状としての「嘔吐」がいかに重要かを述べましたが、具体的には"ゲロ"したあと結構元気な様子でいるならしばらく様子をみてもいいかと思います。もし、もどしたあとぐったりして元気がない、あるいは何度も嘔吐するようなら早めに医療機関を受診した方が安全です。その際、制吐薬をどうするのか。仮に使用して嘔吐が抑えられると、かえって受診までに時間を取り発見が遅くなる危険性があります。また制吐薬には神経系に生じる錐体外路症などの副作用があり、手足のふるえ、頸(くび)を無意識にねじ曲げる、顔面筋のけいれん、精神症状など複雑で紛らわしい症状が含まれます。つまり、これが病気の一症状なのか、それとも副作用なのか鑑別に手間取り、結局使わないほうが短時間で判断できることにもなりかねません。
お子さんが吐いても安易に制吐薬など使わず、落ち着いて全身状態や経過を観察ながら対応して下さい。それが適切な治療への近道となります。

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