愛知医療学院短期大学

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教員リレーコラム

スズメ、カム・バック

石黒 茂 [作業療法学専攻]

子どもの頃、スズメは最も身近な鳥であった。それは私の住んでいた所だけでなく、昭和の時代の日本では、どこでもそうだった。家の軒に巣を作り、いつも「チュンチュン」と鳴いていた。当時、焼き鳥屋で出てくる鳥はスズメだと聞いて、竹カゴと米粒で捕獲を試みたこともあったが、実際に捕まえたという記憶はない。舌切り雀の話を思い出し、巣から落ちてきたスズメの雛を育てたこともある。スズメは、どこにでもいるフツウの鳥であった。
近年、都市部では、住宅が昔の瓦屋根でなくなったせいで、スズメが巣を作れなくなり、数を減らしていると言われている。私の家の周りでも、古い家は壊され、新しい家がどんどん建っている。住宅事情の変化だけが原因ではないだろうが、いつ頃からか、家の庭でスズメを見かけなくなっていた。ところが、どうしたことか、この冬、わが家にスズメが来るようになった。朝、10羽以上の群れが、庭の木にとまっている。旧い友達が久々に訪ねてきたようで、なつかしい。まだ、健在でよかった。
私の妻は何を思ったか、ここ数年、庭にパンを撒いたり植木の枝にミカンの輪切りを刺したりしている。おまけに、帰省途中の道の駅で手に入れた鳥の巣箱までかけている。巣箱の効果はあると思えないが、不思議なもので、街の中にもかかわらず、結構いろいろな鳥が入れ替わり立ち替わりやってくる。この時期には、ムクドリやツグミに混じって、ジョウビタキの雄が綺麗な前翼の模様を見せ、ときどきメジロも顔を出す。朝起きて、窓から鳥の姿を見るのが楽しみだ。そんな妻の餌付けが功を奏し、遅ればせながらスズメも戻ってきたのだろうか。
街中で見かける鳥はカラスとハトだけだと言われて久しい。野生の鳥は、都市化によって環境が改変され、居場所を追われ、どんどん少なくなってきている。中には、人間の逆手をとり、いや都市部の環境に適応して、街中に居着いているものもないわけではないが、数少ない。やはり、鳥を呼ぶには、鳥が来るように環境を整えてやらねばならない。餌付けについては批判がないわけではないが、鳥と共存するには、ちょっとした工夫と努力の積み重ねが必要だ。何もせずに放っておいては鳥も集まってはこない。少子化の中で人を集めなければならない学校や企業と同じだ。パンくずを奪い合うスズメを見て、そんな当たり前のことを今更ながら考えた。

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