愛知医療学院短期大学

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教員リレーコラム

バタフライガーデン

石黒 茂 [作業療法学専攻]

 最近、バタフライガーデンという言葉を知った。有名な昆虫写真家である海野和男氏によると、バタフライガーデンというのは、美しい蝶を庭に呼ぶことで心の安らぎを得、また自然を回復しようという試みから、30年ほど前にイギリスではじまったものだそうだ。このバタフライガーデンが学校教育の中でも活用されようとしている。
  今度、家の庭でもバタフライガーデンに挑戦してみるかとインターネットで調べたところ、結構、いろんな材料を売っている。本末転倒であるような気がするが、中にはソーラー発電で羽ばたくアゲハチョウのようなものまで売っているのには驚いた。

 庭にチョウを飛来させようと思うと、蜜を吸わせるための花が咲く植物や幼虫の食草になる植物を庭に植えなければならない。ただやたらに植物を植えても上手くいかない。チョウには種類ごとに好みの花があり、食草も違う。昆虫採集をしたことのある人なら知っていることだが、アゲハチョウなどには飛来する道筋があるから、チョウを集めると言ってもそんなに簡単ではないのだ。その維持にも大きな労力がいる。しかもチョウが卵を産み、やがてイモムシ(幼虫)になると植物の葉を食い散らし、不快な姿?を見せるようになる。花が咲けば、チョウ以外の虫も集まって来る。ハチが来ただけで大騒ぎをする今の子どもたちが、そんな自然に食いつくか心配にもなる。
  最近我が家の妻が、庭の木の枝にカキ、ミカンなどの果実やパンのかけらを刺すようになった。庭の木に来たジョウビタキやシジュウカラをたまたま見て、急に興味を持ったらしい。鳥がどれだけ集まってくるか興味津々でみていたら、結構いろんな種類の鳥が集まってくる。こんな街中でもまだまだ捨てたものではない。自然はまだまだ残っているのだ。

 鳥が来るようになってから、妻が窓から外を眺めては「あの鳥は何だ」とよく尋ねるようになった。自然が身近にあればこそ、興味も出てくる。バタフライガーデンも自然の生き物と触れあうことが少なくなっている今の子どもたちにとっては、貴重な体験になるはずだ。有名な生物学者の中には、昆虫少年からはじまった人も結構いる。昆虫採集がすたれた今、今後はバタフライガーデンから生物学者が出てくるかもしれない。  

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