愛知医療学院短期大学

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教員リレーコラム

家族を送る

加藤真夕美 [作業療法学専攻]

初秋のさわやかな風が吹き抜けた夜、義理の父が旅立った。
9か月間の闘病の末のことだった。前半は入退院の繰り返し。
入院中、義母は雨の日も風の日も、一日も欠かさずに電車とバスで病院へ通った。
ほとんど何も口にしたがらない義父の口元へ、時間をかけて食事を運んだ。
「今日は2割くらい食べたよ。いつもけんかしながらだわ」と
義父がどれだけ食べたか、が毎日の日課であり、義母の安心の要素。
病院食をまったく受け付けなくなると、新鮮なフルーツをミキサーにかけ
一口、二口、ゆっくりと口へ運ぶ。

ある日、主治医に家族が呼ばれた。妻、息子、とその嫁がかけつける。
画像をわかりやすく丁寧に説明しながら主治医が義母にかけた言葉。

  あと数日で逝っても不思議ではない状態。ご主人はよく頑張っている。
  本当は食事をするのも辛いかもしれない。誤嚥の影響は、否めない。
  でもご主人はまだ、回復の望みを捨てていない。
  そして奥様が本当に献身的に、ご主人のお世話をしているのを僕は知っている。
  今まで続けていたお世話や治療を継続することが
  ご主人の生きる意欲をつないでいるとも感じている。
  だから僕は、奥様の献身的な介護を止めないし、
  むしろ奥様の気が済むまで続けて頂いて構わないと思っている。

厳しい現実を包み隠さず、わかりやすく丁寧に説明し、
患者の思いを代弁し、家族の苦労を最大限ねぎらう主治医の言葉。
1時間ほどの話し合いの後には、病院に対する不信や不安な感情は霧散し、
家族それぞれの心に"覚悟"の気持ちが芽生えた。

義父の旅立ちの夜、主治医は一時仕事を離れていつの間にか家族の傍に寄り添い、
静かに、深々とおじぎをして霊柩車を見送ってくださった。

真の医療人に出会い、一家族として、私も救われた。
家族皆、心から感謝している。

そして。
日取りの都合で通夜・告別式は数日後に決まり何ヶ月ぶりかに義父が自宅に戻った。

毎週末にお見舞いのため病院通いし、おじいちゃんの頭をくりくりと
なで続けた4歳の我が息子は、冷たくなった祖父の頭をそっとなでた。
そして、親の制止もむなしく、ふかふかの白い布団へダイブ!
やめて!おじいちゃんが痛いから。
… ああ、布団の端でよかったと安堵の溜息をつきながら布団を治す母。
告別式には「おじいちゃんともっと遊びたかったのに … 」と泣きじゃくった幼い孫。
わかっていたんだね。5日間も、おじいちゃんの傍にいられてよかったね。

作業療法士でも教員でもなく、一家族として医療の受け手となり
様々なことを学び、考えた9ヶ月であった。
家族の"生"はこれからも続く。ひとまずはお母様、お疲れさまでした。

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