愛知医療学院短期大学

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教員リレーコラム

2本のバラ

山下 英美 [作業療法学専攻]

我が家には2本のバラがある。

1本はピンク色の羽衣という四季咲きのつるバラで,もう1本は,黄色の木香(もっこう)バラである。

羽衣は,新築と同時に植えた思い入れのあるバラで,植えて3年目くらいから,7,8センチにもなる大輪の花を,たわわに枝先に着け,春に幸せを感じさせてくれていた。

その後,色どりが欲しいと思い,黄色のもっこうバラを植えたのだが,こちらは成長が速く,あっという間に羽衣の枝の上に生い茂り,日陰を作ってしまった。

私が庭の手入れができずにいるうちに,主人はもっこうバラをアーチ風に仕立てるようになっていた。羽衣は切らずにいてくれていたが,ここ2年ばかりは,黄色のトンネルを突き破ることのできた数本の枝にかろうじて花が咲くという状態であった。
そして,今年の夏の台風で枝が倒れかけたあと,私は,羽衣をきちんと手入れするのか,そうでなければ,せっかく伸びたシュートを切られてしまうのかの選択を迫られていた。

もっこうバラには棘が無く扱いやすい。一方羽衣には硬い棘があり,枝も硬くて扱いにくい。けれど,バラ本来の見事な花をつける。10年以上この家とともにある,大切なものであったことを思い出した。もう一度ピンクのバラたちの誇らしげな姿が見たい。

来春のためのシュートを誘引するスペースを得るには,もう,今手伝ってもらうしかないと決心し,先日,2人で2本のバラの住み分けを実行した。絡んだ枝をほどき,もっこうバラには少し場所を譲ってもらい,何本かの枝を切ってもらった。おかげで羽衣にも良く日が当たるようになった。

そのかいあってか,晩秋もとっくに過ぎた1月1日,小雪の舞う中,5センチほどの花が咲き,思わず写真を撮ったほどである。

2本のバラは住み分けをしたものの,桜が終わるころにもっこうバラが先に咲き始め,散り切る前に羽衣が咲き始める。きっとそれぞれの良さをひきたて合うに違いない。

春には2本のバラの競演が楽しみである。

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