愛知医療学院短期大学

検索

教員リレーコラム

認知症と紛らわしい高齢者のてんかん

杉山 成司 [理学療法学専攻]

「てんかん」の病名はどなたもご存じでしょう。以前は子どもに多くみられたのですが、最近は65歳以上で発症する高齢者てんかんが増えており、注目されています。超高齢化社会が背景にあると考えられます。この病気の大きな特徴は、症状が認知症と紛らわしいこと、しかし認知症と異なり、けいれん止めの薬が効果的で治療が十分可能なことです。
普通てんかん発作として、意識を失って全身をガクガクさせるけいれんを思い浮かべるかも知れません。しかし高齢者てんかんは違っています。次に特有な幾つかの症状を示します。
・突然、短時間動作を止めてボーッとし、呼びかけにも反応しなくなる。数秒~数分で意識は回復するが、その間の意識はない。
・過去の特定な記憶が抜けてしまう。
・口をモグモグ、舌をペチャペチャ鳴らす。あるいは無意味に身体をゆすったり、何度も服や周りのものをモゾモゾ触る動作を繰り返す。
・問いかけに対して「あー」「うー」などの返事しかしなくなり、会話が成立しない。あるいは同じ話を繰り返す。
・知らないうちにケガや事故をしている。
・急に怒りっぽくなり、不必要に声を荒げる。
・目の焦点が合っていない。 などなど。
てんかんの発作は、一過性でこれが繰り返し起こる、そして発作が終わると健常な状態に戻る。この2点が認知症と見分ける上で大切なことです。すなわち、平素は意識もしっかりしていてコミュニケーションもとれ、行動もスムーズに行えるということです。ただ、意識障害については脳卒中を、記憶障害では認知症は忘れてはならず、専門家の診断を(早めに)受ける必要があります。
当節は高齢ドライバーによる交通事故が大きく取り上げられています。大抵はアクセルとブレーキの踏み間違えなのですが、時に「事故を覚えていない」と訴える高齢者がみえます。てんかん発作による可能性も否定できず、もし前もって治療薬で発作防止ができていたらと、治療できる病気を見逃さないよう努力したいものです。

NEXT ≫ 2018.12.07 清水 一輝 [作業療法学専攻]

教員リレーコラム