愛知医療学院短期大学

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教員リレーコラム

柿食えば・・・

石黒 茂 [作業療法学専攻]

妻がスーパーで柿を買ってくるようになった。柿の季節である。
子どもの頃、自宅の庭に柿の木があり、秋になると柿がたわわに実った。見た目とは違い、味は良く、赤くなるのが楽しみだった。そんな思い出もあってか、今でも柿は好物だ。
定かではないが、庭に生えていた柿の木は実の形からして富有柿であったと思う。当時、近所の八百屋で売っていた柿も同じような格好をしていたので、多分、子どもの頃に食べていた柿は富有柿ばかりであったような気がする。その富有柿の種子は丸っこい。見方によっては涙粒のような形をしている。理科や生物の教科書に載っていたカキ(柿)の種子も同様な形である。そのため、ずいぶん長い間、柿の種子の形と言えば、丸っこいものと思い込んでいた(今思えば、干し柿の種子は丸っこくないのは知っていたのだが)。
いつの頃だったか、「柿の種」というお菓子を食べていて、似ても似つかぬ格好をしているのに、どうして「柿の種」と言うのか不思議に思ったことがある。インターネットが発達している現在と違い、簡単に調べる手段もなく、おかしいと思いながらも忘れて頭の片隅にしまっていた。
大人になって、柿にはいろいろな種類があり、柿の種子にも三日月のような形があることを知った。「柿の種」は新潟県の生まれである。図鑑で見れば、新潟県で普通に見られた柿の種子は三日月形をしており、確かに「柿の種」そのものだ。のどに刺さっていた小骨のような長年の疑問が氷解した。
「柿の種」を最初に作った浪花製菓のホームページによれば、当時の形は小判型で、すべて手作業で薄くスライスした餅を、金型で切り抜いていた。その金型を女房がうっかり踏み潰してしまい、元に直らずそのまま使用したら、三日月形のあられになってしまった。そんなあられを「形が柿の種に似ている」といわれ、「柿の種」が誕生した。金型の変形で、あられの形や大きさは変わったが、食べやすさから言えば、ちょうどよくなった気がする。小判の形のままだったら、今のように、世に広がったかどうか。その後もピーナッツを混ぜるという偶然も重なり、創業会社とは違った別会社も売り出し、ヒット商品になっている(因みに、K製菓によれば「柿の種」と「ピーナッツ」の理想の混合比は、重量で3対2、粒数で言えば5対1だそうだ)。そして、今でもさらに商品が進化しているのが面白い。
「柿が赤くなると医者が青くなる」ということわざ(?)がある。柿に限らず秋の果物はビタミンCが豊富で、健康によいから医者が手持ち無沙汰になるということのようだ。柿の代わりに「柿の種」では医者が青くならないだろうなと思いながら、今夜も柿の皮を剥いていると、どこからか音が聞こえてきた。よく聞くと2階の柱時計の音だ。これがお寺の鐘の音なら最高だろうなあ。

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