愛知医療学院短期大学

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教員リレーコラム

「家」

草川 裕也 [作業療法学専攻]

連日、夏の暑さが続いていますが、8月は終わりました。
徐々に秋に近づいていくのだと思います。
秋は、食欲の秋、芸術の秋、スポーツの秋、読書の秋、実りの秋など...
賑やかな季節です。
そして、天気も「賑やか」と言えるのではないでしょうか。
変わりやすいうえに、台風がよく接近するため、大雨になることもあります。

台風は大雨だけでなく、風が強く、さまざまな被害をもたらします。
幸いにも、今まで大きな被害を受けたことはないですが、
実家に住んでいたときには、台風が通るたびに、恐怖を感じていました。
実家は、築60年以上であり、暴風を受けると家全体がガタガタと揺れていました。
いつか家が崩壊するのではないかと、いつも心配していました。

そんな実家ですが、今月ついに新しく建てかわります。
生まれたときからそこにあり、
長く慣れ親しんだものが大きくかわるということには抵抗があります。
物が新しくなるということに過ぎませんが、寂しい気持ちもあるのは確かです。

「家」というものは、最も安心でき、最も大切な場所だと思います。
素の自分で居られる場所であり、眠る場所であり、物を保管したりする場所。
そして、思い出や自分の人生が詰まっているものです。
だからこそ、壊してしまうことに寂しさを感じるのではないかと思います。

私たち、作業療法士は、対象者と対象者の周りの環境を評価し、
環境に対して直接アプローチすることもあります。
「家」への退院を目指して、「家」の段差や頻繁に過ごす部屋などをチェックします。
「家」での過ごし方、問題点を評価して、「家」を訪問して、リハビリを行います。
このような「家」に関わるリハビリを行っていくと、対象者の「家」に関係する思い出や希望をたくさん聞くことができます。

「昔は、○○を探しにいろんなところに行ったな。」
「これは、あのとき○○さんにもらった物だから、ぜひまた使えるようになりたい。」
「どうしても冬場には、湯船に入りたい。」
「この椅子が、一番居心地がいいから、ここに座りたい。」

長く過ごした分だけ、そこには、対象者の様々なものが詰まっています。
このような思い出、希望、体験、習慣を大切に生かすのが、作業療法士の役割であると思います。丁寧に評価して、リハビリに取り組んでいけたらと思います。

話は戻って、今月から新しい家に移ります。
寂しさはありますが、やっぱり期待もありますね。新しい思い出がいっぱいできるといいな。

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